―you―
「奈緒の分もチケットを貰った、そのお礼もしたいし」
「あ、奈緒さんって言うんですね。オクサン」
「そう。今晩はどう?」
 私は奈緒の携帯電話に電話を掛けた。君を家に招きたい旨を伝えると、彼女も喜んで承諾した。
「どう?」
「じゃ、お邪魔させて下さい」
 嬉しそうに笑う。見ている方まで心が軽くなるような笑顔だ。
「稽古がこの後七時まであるんですよ」
 仕舞いかけた携帯電話のサイドボタンを押す。背面の画面に時刻が表示された。四時五十二分。
「じゃあ、七時十分にまたここで」
「はい。わかりました」
 君は立ち上がり、真っ直ぐゴミ箱へ向かった。そして稽古場へ戻って行く。私も立ち上がり、職場へ戻る。外回りの報告をして、残った仕事を片付けたら丁度良い時間になるだろう。
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