Broken†Doll
太陽が優しく照り付ける中、少女は一人大きな庭で読書に飽きていた。


500ページ以上もある分厚い本は、小さな少女には実に不釣り合いである。

本の半分まで読み終えたあたりで、少女は本を枕にし、綺麗に刈られた芝生に寝転んだ。


「あー、雲がお空を泳いでるー」

一人ぼっちの午後の庭は、こんな独り言も誰かに聞かれることはない。

ただ、少女の隣に大きな犬がゆらゆらと尾を振って座っているだけだ。


「キャシー、散歩にはもう連れていってもらったの?」

少女は犬の動くしっぽを掴んだり離したりを繰り返した。

「あたしはねー、お父様とお母様がいいって言わないとお外へ出られないの」


ムクリ、と起き上がり、犬の頭を優しく撫でながら鼻に顔を近付けた。


「キャシーはここから出してもらえていいわね」

そう言いながら少女は庭の先にある大きな塀と門を指差した。

「いつかあの外へ出てみたいわ」

子供らしからぬ曇りの掛かった目で門を睨みつけた。

「……だよねー!本当にびっくりだったよぉ」

「えー?!すごーい!」


門の外の遠くから女の子の甲高い声が聞こえてきた。


「キャシー、誰か来たよ!見に行こう!」

少女はさっきと一変して顔をぱっと明るくさせ、門へ駆け寄った。

人に見付からないよう、塀に隠れながら外の様子を伺った。

「それでね、あの子もその人が好きだったんだって」

「へーえ。でも良かったねー」

少女と同い年くらいの女の子二人が門の前を通り過ぎる。

二人は本当に楽しそうに話しをしていた。
満面の笑みが、どれ程の嬉しい事があったのかを表現している。

少女にはキラキラ輝いて見えるような気がした。

門の陰から二人を見る少女のスカートの裾を、キャシーは優しく引いた。

「…楽しそうね。ああ、ごめんねキャシー。そうよね、これ以上ここにいたら誰かに見付かって怒られるもの」

少女は手についた門の手摺りの錆を掃い、門から離れて元の芝生へと戻った。

< 7 / 7 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

17歳のピストル

総文字数/718

青春・友情2ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
人間誰だって逃げるのは得意。 言い訳だって、自分の都合の悪いことがあると、その場で出てきてしまう。 好きなのは好き。 嫌いなのは嫌い。 でも、そう上手くいかない人生に あたしは銃口を向けずにはいられなくなる。 さあ、引き金を引く前に 逃げた方がましなのだろか。
いちごあめ。

総文字数/1

恋愛(その他)1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
甘酸っぱくて 何故か好きになってしまう そんな苺飴は好きですか?
狼のお姫様

総文字数/0

恋愛(その他)0ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
小さいお姫様は ツンデレ狼王子のもの でも 狼の弱点が お姫様なのは知ってるかい?

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop