Broken†Doll
太陽が優しく照り付ける中、少女は一人大きな庭で読書に飽きていた。
500ページ以上もある分厚い本は、小さな少女には実に不釣り合いである。
本の半分まで読み終えたあたりで、少女は本を枕にし、綺麗に刈られた芝生に寝転んだ。
「あー、雲がお空を泳いでるー」
一人ぼっちの午後の庭は、こんな独り言も誰かに聞かれることはない。
ただ、少女の隣に大きな犬がゆらゆらと尾を振って座っているだけだ。
「キャシー、散歩にはもう連れていってもらったの?」
少女は犬の動くしっぽを掴んだり離したりを繰り返した。
「あたしはねー、お父様とお母様がいいって言わないとお外へ出られないの」
ムクリ、と起き上がり、犬の頭を優しく撫でながら鼻に顔を近付けた。
「キャシーはここから出してもらえていいわね」
そう言いながら少女は庭の先にある大きな塀と門を指差した。
「いつかあの外へ出てみたいわ」
子供らしからぬ曇りの掛かった目で門を睨みつけた。
「……だよねー!本当にびっくりだったよぉ」
「えー?!すごーい!」
門の外の遠くから女の子の甲高い声が聞こえてきた。
「キャシー、誰か来たよ!見に行こう!」
少女はさっきと一変して顔をぱっと明るくさせ、門へ駆け寄った。
人に見付からないよう、塀に隠れながら外の様子を伺った。
「それでね、あの子もその人が好きだったんだって」
「へーえ。でも良かったねー」
少女と同い年くらいの女の子二人が門の前を通り過ぎる。
二人は本当に楽しそうに話しをしていた。
満面の笑みが、どれ程の嬉しい事があったのかを表現している。
少女にはキラキラ輝いて見えるような気がした。
門の陰から二人を見る少女のスカートの裾を、キャシーは優しく引いた。
「…楽しそうね。ああ、ごめんねキャシー。そうよね、これ以上ここにいたら誰かに見付かって怒られるもの」
少女は手についた門の手摺りの錆を掃い、門から離れて元の芝生へと戻った。
500ページ以上もある分厚い本は、小さな少女には実に不釣り合いである。
本の半分まで読み終えたあたりで、少女は本を枕にし、綺麗に刈られた芝生に寝転んだ。
「あー、雲がお空を泳いでるー」
一人ぼっちの午後の庭は、こんな独り言も誰かに聞かれることはない。
ただ、少女の隣に大きな犬がゆらゆらと尾を振って座っているだけだ。
「キャシー、散歩にはもう連れていってもらったの?」
少女は犬の動くしっぽを掴んだり離したりを繰り返した。
「あたしはねー、お父様とお母様がいいって言わないとお外へ出られないの」
ムクリ、と起き上がり、犬の頭を優しく撫でながら鼻に顔を近付けた。
「キャシーはここから出してもらえていいわね」
そう言いながら少女は庭の先にある大きな塀と門を指差した。
「いつかあの外へ出てみたいわ」
子供らしからぬ曇りの掛かった目で門を睨みつけた。
「……だよねー!本当にびっくりだったよぉ」
「えー?!すごーい!」
門の外の遠くから女の子の甲高い声が聞こえてきた。
「キャシー、誰か来たよ!見に行こう!」
少女はさっきと一変して顔をぱっと明るくさせ、門へ駆け寄った。
人に見付からないよう、塀に隠れながら外の様子を伺った。
「それでね、あの子もその人が好きだったんだって」
「へーえ。でも良かったねー」
少女と同い年くらいの女の子二人が門の前を通り過ぎる。
二人は本当に楽しそうに話しをしていた。
満面の笑みが、どれ程の嬉しい事があったのかを表現している。
少女にはキラキラ輝いて見えるような気がした。
門の陰から二人を見る少女のスカートの裾を、キャシーは優しく引いた。
「…楽しそうね。ああ、ごめんねキャシー。そうよね、これ以上ここにいたら誰かに見付かって怒られるもの」
少女は手についた門の手摺りの錆を掃い、門から離れて元の芝生へと戻った。

