花の名




「………」

「………」








言えない。


なんか、いろいろ考えすぎて言えないよ~。




「…クスッ」

「えっ!?」


「あっ悪い。
 千尋って、本当に分かりやすいなと思ってさ」


クスクス、とあたしの顔を見て笑う彼。


なんか変な顔でもしてたのかな。


あたしはう~んと悩みながら、どんな顔をしていたかを考える。


「いいよ、まだ」


ポンッと柔らかく、彼の大きな手があたしの頭に乗っかった。


「俺のことは、これからゆっくり好きになってけば」


「…なんで、あたしが言おうとしたことが分かるの!?」


「内緒です」


一気に恥ずかしくなって、あたしの体は全身が熱くなった。


きっと顔も赤い。


あたしは俯きながら、彼が撫でる手を感じていた。


優しくて暖かいて。


イヤじゃない。


胸がドキドキして、息苦しい。



この気持ちはいったいなんだろう…




「ありがとう、西浦くん」




少し赤い顔を上げて、あたしは笑顔で言った。






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