ずっと君の隣で。

電灯が彼の顔に影をつくる。

口元が、少し上がった。

(…笑った?)

彼はそのまま走り去った。

広い背中が目に焼きつく。

残ったのは…彼の甘い香りだけだった。



追ってみようかと思った。

でも、足が動かなかった。

あまりにもキレイすぎて、あまりにも美しすぎて。

追いかけることを忘れていた。

声も出せなかった。

教えてくれたのは彼の香りだけ。

(…甘っ…)

星の下でペタンと座り込んだ。

時計は10時35分を経過していた。

(帰らなきゃ…。)

やっとの思いで立ち上がると、私は家に向かって走りだした。
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