This is us



入った先は、デパート。

ふわっと包む冷房の風が、濡れた肌を刺激する。


「ちょっと待ってて」


小田切をベンチに座らせると、俺はエスカレーターを駆け上がった。



生活用品の売場で、バスタオルを二枚購入する。


「すぐ使うので」


そう言って、袋に入れようとした店員に断りを入れて受け取った。



戻ると、不安そうに泳ぐ小田切の瞳と目が合う。


「ほら」


「…ありがと」


バスタオルを差し出すと、それを肩にかけた。


髪からは、ぽたぽたと雫が落ちる。


「……」


「……」


俺も隣に腰を下ろして、髪を拭った。

小さなデパートの入口は、雨が止むのを待つ人で溢れている。


「電話…通じない」


「え…」


携帯を見つめて呟く彼女を見て、俺もポケットから携帯を取り出した。


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