ゴシップ・ガーデン
バラを見渡して、
何だか感慨深い気持ち。



ヒオカ先生が
歩いてくるのが見えた。

心なしか足どりが軽そう。




「?」


バラに視線を戻した
あたしの目が、
違和感をとらえた。


一カ所、不自然に
花びらが散乱している。



「何!!ヒドイ!!」


サッカーボールだ。


投げ込まれたボールで
バラが倒されてる。


誰がこんなこと…!!

とっさに
あたしはボールを払いのけて、

倒れたバラを
元通りに起こそうと
幹に手をかけた。



「…っ!」

手の甲に、
ピリっとした刺激が走った。


バラのトゲで
引っかいたみたい。



次の瞬間、

「触んな!」


大きな声と白衣が
あたしに覆いかぶさった。


バラのトゲなんかより、
よっぽどびっくりした。



ヒオカ先生は、

あたしの腕をかたく握って、
自分の方へ強く引き寄せた。



「危ないから」

あたしの身体に、
直接ヒオカ先生の声が響く。


あたしは
ヒオカ先生の腕の中にいた。



ヒオカ先生は
あたしをバラから
引き離すため。

そう、ただそれだけ
なんだけど。


背中と腕に男の体温。


頭の中が、グラグラした。



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