ゴシップ・ガーデン

ちょっとお酒入ってるから？


ヒオカ先生の表情が
いつもより柔らかい。

言葉数も多い気がするし。



まわりの人たちにあわせて
シャンパンとビール飲んでたのは見た。


ま、いわゆる酔っ払いに比べたら
まったくのシラフ同然にしか
見えないんだけど。



それでも学校とは違う。




ちょっとした無理ぐらい
言えちゃいそうな雰囲気に、
口に任せて言った。



「…ねぇ先生、ここは、
学校じゃないよ？」



ダメもとで手を差し出した。



二人の間の空気が震えた
気がした。




ヒオカ先生の少し驚いた黒い瞳が
じっと見つめてきて、
たじろぎそうになった。


けど今さら手を引けなくて、
あたしも見つめかえした。



何か言おうとするのを
ためらうような
かすかな口元の動きが見てとれた。




少しの沈黙のあと

ヒオカ先生が
すくい上げるように
あたしの手をとった。



羽のように軽く触れただけなのに、
電流でも走ったような気がした。



思わず目を伏したあたしに、
ヒオカ先生の足が一歩近づいた。



そして手を伸ばして


あたしを抱きよせて



キスをした。