"code = choice"

 瀬戸 麻美は一瞬うつむき、そして顔を上げる。今までの表情とは全く違い、僕に初めての笑顔を見せた。
「許してあげる。
 原子力発電所の問題も解決したし、恩赦よ恩赦。でも、次に何かしたら一生許さないわよ」
「は、はい!!」

 僕はチラリと時計を見る。
 16時20分。
 今から帰れば、電車でも18時過ぎにはモモエに行ける。

 瀬戸 麻美と和解。
 意図せず巻き込まれたシステムトラブルも解決し、僕には瀬戸 麻美と知り合えた幸運だけが残った。

 そう思った瞬間―――

「変ですねえ・・・」
 阿部先生が呟く。その声色には、明らかに困惑と焦燥感が滲んでいる。
 僕の全身に鳥肌が立ち、イヤな予感がツマ先から頭のてっぺんまで駆け上がる。僕は慌てて阿部先生の傍に向かう。

 画面を見ると、一度は減速した数字が徐々にそのスピードを増し始めていた。


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