亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「………手を貸せ。引いてやる」
…溜め息混じりにそう言うと、また無言の平手打ちが飛んできた。
優れた狩人の反射神経を無駄に発揮し、動きを見切ったザイは、平手を避けると同時にその手を掴んだ。
「ちょっ…!?…だ、だから、触らないでって…!」
「…埒が明かん。何が嫌なのか全く分からんがとにかく辛抱しろ。…もっと速く歩け」
…言うや否や、ザイはそのまま彼女の手を引いて歩きはじめた。
真っ赤になったり真っ青になったりと忙しいアシュは、その手を振りほどこうともがく。
………が、自分よりも大きく力強い手は、これでもかと言わんばかりにしっかりと掴んでいて、とてもじゃないが逃れるのは不可能だ。
「………なんだこの骨と皮だけ同然の腕は…。細すぎる………お前、一体どんな物を食べているんだ?きちんとまともな食事をしているのか…?」
「食生活の話とか狩人なんかに言われたくないわよ!…嫌!嫌だってば!………離してよ、離してー!!」
「いかん。お前は不健康過ぎる。次にまた嫌だなどと言ったら………おぶるぞ…」
…無表情で半ば睨んでくるザイに、アシュは声を詰まらせた。
………さっきまで無関心だったくせに、突然何だこの変わり様は。過保護な親の様に世話焼きになってしまった。
何故か…目が、本気だ。
…きっと逆らえば、気絶させてでもおぶるに違いない。
これはヤバイ。
変な狩人に頼ってしまった。
色々な危機を感じたアシュは、無駄に重い威圧感を浴びせてくるザイに………コクリと頷いた。
「………………もう、何も言わない…」
「よし、行くぞ」