亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~





夜の帳の中で寝静まった街は、当然だが人っ子一人見当たらず、珍しいことに風も無く、異様な程静かだった。
暗い白銀の世界と一体化した街に、小雪混じりの冷たい風が吹き抜け、凹凸のある大地を満遍なく撫でていく。
特に大きくもなければ小さくもない眠る街の光景が見渡せる丘の上で、その風を全身に浴びる。




鼻を突くその冷たい空気に………顔をしかめた。







風が運んでいたのは、木が燃える臭い。

焦げる臭い。

異臭。









臭いの根源は何なのか。ポツリと浮かんだその疑問だったが、視線の先の光景を目の当たりにすれば………首を傾げるまでもなかった。














「―――…あれは…何だ」









はためくマントの裾を押さえながら、呆然と佇むザイの目に映るのは。







赤。





見慣れた鮮血の赤とは違う、赤。



異なる悍ましさを秘めた、赤。

燃える炎の、赤。

















暗い大地を照らす様に、真っ赤な炎は街の端で孤立していた。
煙と火の粉が、舞い散る。
燃えているのは、この目が節穴でなければ。







………アシュの、屋敷だ。

街の端に堂々と立つ一際大きな屋敷は、彼女の家以外に無い。

どうして今、彼女の屋敷は燃えているのか。赤く染まっているのか。





………しかし今は…そんな事、どうでもいい。

「………っ…」

悪戯な風が外したフードも被り直さず、ザイは丘を駆け降りた。
木々から木々へと跳び移り、街との距離を縮めていく。





どうして。



どう、して。こんな。















「………何故…!」


< 1,098 / 1,521 >

この作品をシェア

pagetop