亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
僅か数秒の間に突然現れた森の中央を横断する細い小道を、三人はただただ唖然と眺めていた。
止んでいた吹雪が再び地上に吹き付け始めると、セミロングの金髪が靡く後ろ姿が、木々によって作られた小道の薄暗い闇に向かって歩き出した。
躊躇いも無く進んでいく堂々とした振る舞いの彼女に、ハッと我に返ったダンテがやや上擦った声を上げた。
「…見付けた…って………何を…」
「…『長老』に決まっているだろう。正しくはアルテミスの場所だが。……お前達が大切にしている樹木が教えてくれた」
…樹木が、教えた?
森が自ら拓いて道を作ったり、アルテミスの場所を教えてもらったりと…先程から、一体何が起こっているのだ。
この異端者が何かしている事は分かっているのだが、あまりにも常識の範囲を超えていて頭の整理がつかない。
ちらりとこちらに振り返る綺麗な微笑。
邪魔をしたな…と呟いた彼女の瞳には、あの赤い輝きは無く。
いつか見た、あの明るい空の色が、そこにはあった。
偉く足場の整った木の根で出来た道は、凹凸も少なく、心地よい靴音が響いてなかなか快適に思えた。
この雪国に来てからというものの、柔らかくて滑りやすい何とも足場の悪い積雪ばかりだった。
吹雪の冷たさは変わらないが、アーチ状に絡み合った木々の枝が屋根代わりとなり、降り懸かる雪の量は少ない。
道の先の、ずっと先は、闇の一色だけだ。
…だが、見えない先への不安を、ローアンは感じてなどいなかった。
自分を囲み、行くべき場所へと導いてくれる木々達に、心中で何度も礼を言う。
(………白の魔術は便利だが……………神経を、使うな…)