亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

問い掛けても、にじり寄る彼等から返事は無い。問答無用と言わんばかりの圧迫感に満ちた空気に、ケインツェルは楽しそうに目を細めた。

「…教えてくれないのかね?…冥土の土産に聞かせてくれたっていいじゃないか………………ああ………良いねぇ、良いねぇ………良いねぇ………反逆っていうのは…素敵だ!…楽しいねぇ!!暇で暇で退屈していたんだよ諸君!!諸君は今夜の舞台に立つ本当の役者だねぇ!!」


…反逆。
そう、これはどう見ても、誰が見ても、反逆だった。誰が企てたかは分からない。少なくとも側近である自分を狙っている事からして、老王に味方する側ではないことは確かだ。だが…ケインツェルにとって、細かい事はどうでもよかった。

…嬉しそうに高笑いを上げ、ニヤニヤと笑みを絶やさないこの男。
傍から見ている者からすれば、ケインツェルの言動は異様そのものだった。

死を前に狂ったか、それにしてはこの余裕振り………何か引っ掛かる。

無言で互いに目配せをし合う兵士達の前で、ケインツェルは再び高らかに笑った。

「素敵だ…素敵だねぇ!誰がそんな面白い事を考えついたのか…賊討伐による城内の警戒が手薄な時間を狙った用意周到な計画。事前に…恐らくだいぶ前から既に練られていたのかな?諸君の様な味方を集めるのにも時間を要しただろうしねぇ?それで?君達はどうなのかね?忠誠を誓った国そのものに反逆を企て、上司に刃を向ける君達の罪悪感は如何なるものなのかな?…フフフフフフ!!」

「…っ……黙れ!!」


先頭にいた兵士が舌打ちするや否や、ケインツェルを囲む様に全員が散らばった。
逃げ場は、無い。

それでも笑みを浮かべるケインツェルは、気管支に違和感を覚え、一時は収まっていた咳を再び繰り返し始めた。



兵士達の鋭い剣が、近寄ってくる。

危機感を感じていないのか。ケインツェルは血の味が広がる口をニヤリと歪め、小さく不気味な声音で呟いた。








「…ああ、しかし諸君は残念ながら、大根役者の様だねぇ」

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