亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


………アイラは目を細め、そのまま歩を進めた。
ケインツェルに向かってヒラヒラと手を振りながら、アイラは遠ざかっていく。

「―――……楽しみにしているよ」




































―――太陽が天上の頂点近くまで登り詰めた頃だろうか。


城内で、急に慌ただしい空気が漂い始めた。
普段、人形かオブジェの如く微動だにしない城内警備の兵士達の約半分が、謁見の間辺りを重点的に囲んでいた。
兵士達はこんな猛暑の中でも、愚痴一つ漏らさずに厚い鎧を身に付け、腰にはフック型の短剣、片手には鋭利な刃が付いた重い槍を握り締めていた。



………謁見の間はいつもピリピリした空気で満ちているが……今日はそれ以上に激しく、いるだけで息苦しい。

……砂漠の土地に適した通気性の良い城内で、しわがれたバリアン王の、苛立った様な怯えている様な、とにかく絶えない罵倒が飛び交う。






「………この謁見の間への通路に、所狭しと兵士を並べるのじゃ!!…中にも……玉座の周りにも配置させよ!…………影武者でも座らせておくべきか……!!」

「王よ、王と貴方様の魔の者以外、玉座に座ることも出来なければ触れることも出来ませんが…」

「―――そんな事は分かっておる!!…言ってみただけじゃ……」

広大な謁見の間に、続々と赤い鎧の兵士達が流れ込み、無言で整列していく。
老王はその様子を、汗を流しながら忙しなく揺れる眼球で眺めていた。


玉座の傍らに立つケインツェルは、重々しい空気へと変貌していくこの景色と玉座に隠れた老王の後ろ姿を、ニヤニヤしながら交互に見ていた。

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