亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
……矛先の知れない恐怖に震え、アルバスは困惑するばかりだった。
―――そこにある。そこにある。そこにある。そこにある。
それは、来る。
生まれ持った雛鳥の本能はそう喚き、警鐘を鳴らし続ける。
だが、どうすればいいのか分からない。
意味も無く瞬きを繰り返し、答えを求めるかの様にアルバスはレトを見上げる。
………しかし、今や対峙するザイ以外盲目なレトは、その視線に気が付かない。
「………僕は……これからもずっと…父さんに助けてもらおうなんて思ってない…独りでも出来る……出来るんだ…」
二、三歩の距離。
猛吹雪の歌。そして傍らに刻まれた巨大な谷の底からも、風の大きな呻き声が響き渡る。
上からも、下からも、無機質な呻きは聞こえてくる。
そんな騒音の最中、静かなザイの耳に届くのは………息子の言葉だけ。
蚊帳の外であるサリッサは、ただただオロオロと二人を交互に見やるばかりで、かける言葉が見つからない。
「………僕は…僕は…!」
「―――……陛下」
「………ああ…」
真っ白に染まる猛吹雪の中の、そのまた向こうを見上げながら、ローアンは目を細めた。
傍らに佇んで共に空を見上げるジンの左目は、敵を前にした時と同様の鋭い眼光を放っていた。
マントが激しく翻ろうが、フードが取れようが、二人は構わず遥か頭上の………とあるものを、凝視する。
白いベールの向こうに見えるのは、青光りする………巨大な、竜巻。
…巨大どころではない。視界に収まり切れない程、それは大きく、すぐ頭上で渦巻く…。
「…あれが……『嵐』か」