亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
対峙する二人の狩人の距離は……少しずつ、一歩一歩…開いていく。
夢中で叫ぶレトに対し、向かいに佇むザイは………ただただ、口を閉ざしていた。
自分というものの存在を言葉にし、そして探しながら…離れていく小さな息子。
見下ろすその瞳には、驚きも無ければ怒りも無く、何の感情も抱かぬ虚無だけが、そこにあった。
「―――…僕は…父さんじゃない…。…不器用にしか生きられないんだ…!」
……ふと、大きな円らな瞳でキョロキョロと辺りを見回し、アルバスは小さく首を傾げた。
今まで見た事の無いレトの姿が、見上げればそこにはある。だがしかし、アルバスの意識は半ば反射的に他へと向いた。
…轟々と波打つ、純白の吹雪きの空。
日は暮れだし、昼間とは違う薄暗い世界が訪れつつある雪空。
…遥か頭上では、雪とは異なる青い筋の様なものが……雪に混じり、風に乗っている。
たくさんの、筋が。
…筋というよりも………青い、風が。
………真上で、飛び交っている。
それは見る見る内に、増えていく。
青い風が、群れなしていく。
増えていく。
「―――……チチ…」
…野生の勘が、アルバスの小さな身体を小刻みに震わせた。
クリクリとした可愛らしい瞳は、吹雪きのベールで覆われた空を凝視する。
その向こうには、何も見えない。
沈黙を貫く雪しかない。
雪しかそこには無い。
だが、そこに。
何かがある。