亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
私とは似ても似つかぬ、細く小さな幼い手。
手袋に包まれた、綺麗な手。
剣や弓を巧みに使いこなし、幾多の生命を奪ってきたとは思えない……息子の手。
私には似ていない。
母親に似たのだろう。
美しい母親に。
……アシュメリアに。
その手を、掴めば。
伸ばされたその手を。
僅か数センチの距離。
震える指先が、その手を求める。
自分を頼る、小さな手を。
そして、その手は。
息子の手は。
ゆっくりと。
ザイの視界から。
遠ざかって行った。
「父さん、駄目だよ」
生温い涙で覆われたザイの視界。
引っ込む手の代わりに。
………自分を見上げる息子の顔が、そこにはあった。
相変わらずの、眠そうな半開きの目で。
乱れた青銀髪はそのままで。
はにかんだ様な、不器用な微笑を浮かべて。
今にも、泣きそうで。
「雪の精がね、泣いてるんだ、父さん。…父さん……あのね…………………………………………ごめん…なさい」
華奢な腕で身体が後ろに引かれるのと。
我が子が雪崩と化した風にのまれ、目の前からいなくなったのは。
ほぼ、同時だった。