亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


―――…自分達だけでも避難してくれと…レトは、言っているのだ。


(―――…何、を…)




ザイは小刻みに震える声で目下のレトを呼ぶが………レトは聞く耳を持たないのか、サリッサの方しか見ようとしない。
幼い紺色の瞳は、父の姿を映してはいなかった。




「………ユノは…大丈夫だよ。……僕が、ちゃんと守るから。…安心して……。………………父さんをお願い……父さん、凄く……頑固だから……」

「…レト……!馬鹿な事を言うのは止めろ…!」

「サリッサさん、早く………………お願い……」

「レト!!」













死なせはしない。

死なせはしない。


何故だ。



何故だ。





何故。















………私の手は、届かないのだ。



この子に、届かない。





こんなに近いのに。



こんなに、近いのに。












―――王子を捨ててしまえばこの子は助かるのに。















………私は…私は、まただ。




また……。












(………また私は………天秤にかけようとして………)






これではまた……繰り返してしまうではないか。

付き纏う過去が頭をもたげ、二の舞を演じようとしている。







迷わないと決めたのに。


私は。

私はまた………大事なものを。













―――…アシュ…。

………アシュメリア。













私はもう、嫌なんだ。













「―――…レトバルディア!!」



この情けない掠れた声は……私の声なのだろうか。
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