亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

長老が何か勅命を下す場所は、必ず『神木』と決まっているため、この時ばかりは『長老』と神官の居場所が明白となるのだ。

この『神木』とは世界樹の事を意味しており、向かい合う二人がいる場所は、実はその世界樹の内部である。





…デイファレトの世界樹、その名も第一世界樹『アルテミス』。

フェンネルの第三世界樹パラサイトとは異なり、幹も枝も葉も全てが純白の美しい大木である。

普段は地中深くに埋没しているため、何処にあるのか分からない神出鬼没な木だ。

儀式や祭礼などで長老が呼び出す事によって、アルテミスは地上に現れる。
とても神聖且つ不思議な魔力を宿しており、狩人の弓もこのアルテミスの枝から作ったものだ。

この大木が地上に現れている時は、それ即ち長老が表に出て来ている事を意味する。
長老に会いたいならば、まずアルテミスを探すのが先決なのだ。



………とは言っても、神に等しい長老に直接会う者など、恐れ多くてそうそういない。
そのため、マナの様に突撃訪問する狩人には、さすがの神官でも少しばかり驚かされる。

おまけに長老宛ての文まで堂々と持って来るのだから、尚更驚いた。





マナはやけに真剣な面持ちを上げ、ちらりと文を一瞥した後………ポツリと、文をしたためた者の名を、小さな声で答えた。





















「―――………ザイロング。………ザイロング=クウに、御座います…」














「…………ザイ……だと?」













神官の目が、大きく開かれた。口は真一文字に固く結ばれている。
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