亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

半ば必死になって説明する兵士の話。ケインツェルは聞いてはいるものの、何処か上の空だった。…テンションの上がり下がりが激しい…どうも掴みにくい人間だ。

「……構いませんよ。最終的に間に合えばどうでもよいのですから。……城に入っていたら、何かと厄介ですよ。城攻めをしてでも引きずり出さないといけませんからねぇ…」

「………はっ」









時刻は夜明け前。
そろそろ淡い陽光が、真っ赤な砂漠を照らし始めるかという頃。

普段は自分の書斎、もしくは謁見の間に一日中入り浸っているこの側近は、こんな朝早くから真面目に蔵書点検に励んでいた。側近でありながら執務も勤める彼の多忙な仕事内容には勿論蔵書点検という基本作業があるものの、側近の仕事の方が優先されるため、あまりこちらには手をつけない。

城の地下は暗く、埃臭く、人気と言えば見張りをする兵士くらいなもので、誰も好き好んで向かう様な場所ではない。退屈そうに佇む見張りの兵士から鍵を貰い、地下への階段をひたすら降りてい行けば……その先には、壮大な地下空間が広がっている。

灼熱の大地が広がる地上と比べてひんやりとした空気が広がっている地下は、書物、武具、過去の戦利品…と、数えようにも数え切れない程のバリアンの遺産が眠っている。
戦利品のほとんどは名品であるが、多くの命を犠牲に勝ち取られた物ばかり。
何処からか入り込み、地下を吹き抜けて行く風の音は、まるで亡霊の嘆きにも聞こえてくる。



そんな不気味な、闇が巣くう暗い地下。
そんなものには一切の関心も抱かない、とでも言うかの様な何食わぬ顔でケインツェルはランプを片手に歩き、地下の最奥に近い辺りに眠っている蔵書を眺めていた。
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