亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
お供としてケインツェルの傍らで佇む兵士は、この地下に入った経験など無かったのだろうか、辺りを見回しながら妙にそわそわとしている。
…きっと早いところ、ここから出たいに違いない。
しかしケインツェルはそれを知ってか知らずか、書物の埃を掃いながらそんな彼に質問を浴びせつづける。
この男は黙っているよりも話している時間の方が長い。
「…ああ、そうそう。…昨夜の時点で、賊達にあの“真実”が知れ渡っている筈ですが………彼等の様子はどうだね?変化は?サラマンダーで監視をつけているだろう?」
「…はっ。…昨夜からは特にこれと言った動きはありません。…むしろ、静かです」
「……嵐の前の静けさなのではないですか?こうやっている今も、事実を知った賊達の怒りはたぎっている事でしょうよ。………フフフッ……単純な方々だ…」
薄ら笑みを浮かべ、ケインツェルは書物の山を掻き分ける。珍しいと思った書物を手当たり次第に手元に重ねていった。
……帰りは、あの本の山を抱えることになるのだろうな。…自分が。
…などと思いながら、兵士は影で小さな溜め息を吐いた。
「主のいない戦力など、所詮は矛先を何処に向けていいのか分からず飛び回るただの烏合の衆。……怒りに任せてその嘴をこちらに向けるのも、時間の問題ですねぇ…。……お転婆なドール嬢は、どうなりましたか?」
「………あちらからはまだ、詳しい報告はきておりませんが………指揮をとっているのはあのゼオスですから………恐らく……」
「死にましたか。つまらないですねぇ。フフフ…」
少しだけ残念そうな顔を向けたかと思うと、すぐに意地の悪い笑みに戻った。
何と書いてあるのか分からない分厚い書物をまた一冊、兵士の目の前に重ねていく。