亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


吹雪と闇で支配された空間には、幾つもの兵士のシルエット。
殺意を露わにした多くの視線に囲まれた中で、ドールは厚い積雪を力無く掴み、震える腕を酷使して身体を起こした。

どんなに殴られても、蹴り飛ばされても、鎚だけは放さなかった。
…よろめきながら立ち上がった少女の身体は、切り傷よりも殴打による痣の方が多い。

切られるよりもダメージは軽いが………はっきりとした痛みではない鈍痛の嵐は、逆に残酷だった。




「………………女を殴るのが趣味なのかしら…?……………最低ね…」

「まだ口が利けるのか?………タフな小娘なこったな…!」


…瞬間、その不敵な笑みが、あっという間に視界いっぱいに広がった。
反射的に身体は後退しようとしたが、気付けば身体の疲労は限界を超えていた様で、それさえも適わなかった。


息を吐く、間も無く。











…水面の様に揺らぐ瞳が、研ぎ澄まされた白銀の光沢を、曖昧な形で捉えた。


―――…途端、小さくも大きくも無い何とも形容しがたい衝撃が、ドールを襲い………横切っていった。


冷たさと痛みで麻痺した身体は、痛みよりもまず………熱い、という不可思議な感覚を感じ取った。



徐々に高まる静かな熱を辿り、視線を下ろせば。










「―――…く…ぁ…」

















鮮血が流れる、右足。

横薙ぎに振り払われた刃は厚手のマントを超え、その下のほっそりとした右足の太股に赤い線を刻んでいた。







突如襲ってきた激痛に、ドールは悲鳴を上げることも無くその場で崩れた。
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