亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


「どうして…って………んー…バリアンが攻めてきたせいで、王政崩壊しちゃったからじゃん?王様がいなくなったからでしょ?」

………書には、三大国の王の血を絶やすな、とある。王政崩壊はそれに繋がる要素と言えば要素だが…。

そこで不意に、おかしくないか?…と、リストが呟いた。


「………そもそも、この国が王政崩壊になったのはバリアンのせいだ。デイファレトにとっては不可抗力もいいところ。………それで天誅を受けるべきなのはバリアンだけでいい筈だろう…?………よく考えたら、デイファレトに罪は無い。………それなのに、デイファレトは天災が訪れた。…今まで深く考えた事は無かったが……何か、おかしいな…」

「天誅って連帯責任なんじゃない?」

…慈悲の欠片も無い、イブ的仮説を無視し、リストは考えに耽る。
…当の、このよく分からない問題を引き出してしまったレト本人は、話の展開振りについて行けず一人首を傾げるばかりである。


「………イーオさん、デイファレトの季節は、本来は春と冬の二つだったそうですね。…それが徐々に冬季の期間が長くなり…この、永遠の冬季に至った訳ですが………春が無くなり始めたのは、いつ頃ですか?」

ふと顔を上げて彼女を見遣れば、イーオは何処か遠くを見据えるような虚ろな表情で、静かに燃える暖炉を眺めていた。
彼女は視線を合わせようとはせず、淡々と答えた。





「………私が、生まれる前よ。…デイファレト王49世の時代から、と聞いているわ。………その頃………バリアンとの攻防が、それまでよりも激しくなってきていたらしいわ。…永遠の冬季が始まったのは、王政崩壊の直後よ。………極め付け…ってところね」






「極め付け…?」
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