亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


「……神の言葉は単純で、明快で、それでいて複雑怪奇なもの。智のある人間はいつの時代も、神の言動に翻弄されてきたわ。…神の望む秩序や平和がどんなものなのか、私達には分からない。平和にも…色々あるもの」



全ての命の源にして神々しい主が下す命令。願い


…それをどういった形で叶えるか。どうやって平和を作り上げていくのか。
秩序を治める人間に課せられた難題の答えは、見付かっていない。

「…人の世には混乱がつきもの。それを避けつづけることで平和に辿り着くか、或いは………あえて混乱と向き合うのか。…戦争という形でね。良く言えば、それは革命。悪く言えば、ただの悪政。………そんな平和の作り方を、貴方方はよく知っているでしょう?……第三大国、フェンネルは」


ちらりと一瞥されたイブとリストは、沈黙を守り続けた。リストは相変わらずの仏頂面だが、普段うるさいイブまでもが押し黙っているのは…極めて珍しいことである。

混乱の先の、平和。
イーオの言葉は、フェンネルの歴史そのものの様に思えた。
つかみ取った平和は、多くの犠牲の下に成り立っている。



「………平和な世とは、どんなものか。はたまた、どうやって平和を作っていくのか。…何がどう神の意向に添うかは分からない。けれど、神の望みと確実に言えることはやっぱり………………デイファレトの王の誕生。………最優先すべき今のアレスの願いは、それよ」












イーオは再び、微笑を浮かべた。
柔らかな彼女の笑みは、何処か悲しげにも見えた。じっと見詰めていると悲しくなるのは何故だろうか。











「………この国に…王は、必要なんだね…」

「………ユノ…?」


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