亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
このイブを拾ったのはローアンで、教育をしたのもローアン。
親の様な唯一無二の存在として慕ってくれるのは嬉しいが、そろそろ親離れもしなければならない。
…今の時点では、到底無理だが。
「………イブ、終わったら今度訓練に付き合ってやるから…」
何度目か分からない溜め息を吐き、そう言ってイブの頭を撫でてやると…。
崩壊していた彼女の涙腺は、キュッと締まった。
「―――…頑張りまっす。イブ、頑張りまっす。これだけで御飯八杯はいけます。あ、何でもないです。頑張るから………あと一回撫でて…!」
こんな切り替えの早い人間…否、フェーラなど他にいるだろうか。
今までの泣き顔は何だったのか、今は百八十度変わって極上の満面の笑みである。
尻尾は表に出ていないが、目に見えない尻尾がはしゃぐ子犬の様にブンブン揺れている…様な幻覚が見える。
ついでにもう一度撫でられて、僅かな幸せを噛み締めながら幸せオーラを散漫させているイブを………傍観者と化したリストとジンは、無言で眺めていた。
最後にジンに歩み寄り、その長身の胸倉を掴んで引き寄せるや否や「隊長に擦り傷切り傷諸々の怪我をさせてみろ。………ぶっ…殺す」と、笑顔で末恐ろしい捨て台詞を残し、イブは“闇溶け”の出来ないリストを闇に引っ張り込んで直ぐさまその場から発った。