亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

二人の魔の者がいる場所から少し離れた、同じ廊下の隅に………ログ、カイのそれぞれの敬愛する主がそこにはいた。


夜の帳から漏れ出る淡い陽光に照らされて、二人の兄弟は佇み、時折歩を進めていた。

天井の古代文字を見上げたまま、ゆっくりと歩くアイラ。
その三歩後ろを、弟のリイザが無言で歩く。







…この兄弟も、同じ城にいて、同じ王子でありながら……共にいることは滅多に無い。



顔を合わせても特に会話は無い兄弟だが、互いに無視しあっている訳でも無く。…かと言って仲睦まじい兄弟という素振りも見せず。

………お互いにあまり関心の無い、しかし見えない絆はしっかりと存在する、他人からは理解出来ない距離を持つ『兄弟』だ。






人気の無い廊下。

何を考えているのか分からない兄が歩き、時に立ち止まる。
その後ろ姿を見詰めながら弟は歩き、時に揃って立ち止まる。



………とても短く、内容も希薄な会話が、ポツリポツリと交わされていた。
















「―――…今朝、父上はようやく部屋から出て来てくれたようだね。…さすがの父上も、賊討伐の指揮までさぼることは出来ないか…」

「はい、兄上」

「………指揮以外は全て、あのケインツェルに任せている様だが………あれに頼りすぎも、如何なものかと思うよ。…私はあの男の存在が…少し、心配だよ。………そう思わないか、リイザ」

「…と、申されますと…?」

…ピタリ、とアイラは足を止めた。同時にリイザも互いの距離を保つべく立ち止まったが……前に佇むアイラは一度軽く首を回したかと思うと………再びゆっくりと歩き始めた。

…リイザも、その後に続く。




「………何と言えば適当かな。………何と言うか…そう………違和感、というものだよ」

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