亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
 
悪戯で人を困らせるのは大好きだが…泣かれるのは嫌いだ。
はっきり言って、自分はあまり他人に関心がない方であり、誰が泣こうが怒ろうがどうでもいいのだけれど。



「……ならば、言わないことに致しましょうか。……驚きましたね、狩人とは泣き虫なのですか?」

……この少年の泣き顔は、見たくないなと思った。
…何故だろうか。主と限られた人間にしか好意というものを寄せなかった、人見知りの激しい自分が…小さな狩人なんかに、興味を抱き始めている。

……それは多分、きっと……私が王子を愛おしく思う様に、この少年も負けじ劣らず王子が大好きだからであって。
………似た者同士ではないけれど、一つだけ共通点がある…似た者同士だから。





(……それとも…この子が放っておけない子犬か何かに…見えてしまうせいでしょうか?)



歩けばついてくる。突き放せば泣いて追ってくる。
……冷酷非道な人殺しのプロでありながら、独りでは何も出来ない捨てられた小動物の様な…奇妙な二面性を持つこの少年。


こんな私でも、見ていると無性に撫でたくなるのは何故だろうか。


……世の中には不思議なことがたくさん散りばめられているけれど、その中でもこの狩人の醸し出す人間性は、特に不思議に思える。
………言う必要の無い事までペラペラと話してしまったのは初めてだ。



髪を掴む小さな手を優しく解いてあげると、ノアは一瞬レトの頭を撫で、踵を返した。歩み始める背中に、レトは再びついて行く。





「………ねえ、ノア」


「何でしょうか」


「……僕ね…ノアは……悪いことしてないと思うよ。……いっぱい、いっぱい恋をして悲しんで……それが、魔の者の性質だって…切り替えの早い生き物だって……ノアは、言うけど………………その感情は…本物なんでしょう?……悪いことじゃないよ。……感じるのは…当然だもの。………それが、ノア達の義務とか、特質でも……何でも…」


「おや、貴方、私を励まそうとしてくれているのですか。いっちょまえに」


「………励ましたいけど…でも僕…………よく分かんないから…。……恋とかいうの、したことないから……ノアの悩みもよく分かんないけど…」


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