亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
何のために部屋にはドアがあるのか。それは出入りするためである。
驚きのあまり、まだドキドキバクバクと激しく波打つ鼓動を聞きながら、常識!、と怒鳴ってドアを指差すリスト。
……途端、この部屋に一つしかないそのドアから、のんびりとレトが入って来た。
「あれが見本だよあれが!!壁は論外だこの野郎!!物凄く心臓に悪いんだよ!!」
「だって、壁を抜ける方が近いんですもの。…おや、寒いのですか?…私はこの寒さにすっかり慣れ切ってしまっているため、寒いとかいう感覚さえ忘れていました。誠に申し訳ありません。…怪我人のお嬢さんもいることですし、少し部屋を暖めましょうか」
ちらりと、ノアは意味深な視線でドールを一瞥した。タイミング悪くその視線とかち合ったドールは、直ぐさまレトのマントを頭まで被った。
………一度この城に来て、追い払われた身である。ノアと直接面を合わせた訳でもないのに、どうやら向こうはドールをちゃんと知っているらしい。
…顔を隠したまま、ドールは何とも言い表せない気持ちの悪い汗をかいていた。
…ノアの何気ない提案に、ユノは首を傾げた。
「部屋を暖めるって………どうやって?…だってこの部屋…暖炉が無いどころか全部凍り付いているけど…」
怪訝な表情で部屋の隅々に視線を巡らせるユノに、ノアはチッチと舌を鳴らして人差し指を顔の前で左右に振った。
何だか、見ていると腹が立ってくる。
「暖めるには、勿論火が必要ですとも。熱ーい火が」
「…だから、その火をどうやって…」
「こうやって」
…瞬間、空を仰いで延ばされたノアの手の平に………ボッ…と、赤々と燃える炎の塊が、まるで手品の様に現れた。