亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
…唖然とした、釘付け状態の幾つかの視線が注がれる中で、ノアは淡々と摩訶不思議な現象を起こしていく。
孤立した輝きを見せる火の玉は、ノアの手の平でどんどんその数を増していった。
…そしてそれは、火の粉の様に天井へゆっくりと上昇していく。
「十個もあればいいでしょうね。…あ、ご心配無く。ものの数分でこの部屋は生温くなりますよ」
浮遊する火の玉は部屋中のあちこちに散り、壁や天井に当たるか否か、という寸前………ピタリと、その場で制止した。
火の玉と壁の僅かな隙間には、見たこともない青白い光を放つ小さな魔法陣がぼんやりと浮かんでいた。
「………これ…魔術…?…火なんか出せるんだ…」
魔術には、白黒の魔術以外にも色々ある。
生きた魔力と言われるノア達魔の者は、仕えている国によって魔力の性質が異なると聞いている。
よって、どの魔の者も全ての魔術を使いこなせる訳ではない。
火を生み出すのも、そう簡単に出来る事ではないが………ノアは実に、あっさりだ。
「まぁ、多少はね。しかし、火の魔力を司るバリアン程、上手くは扱えませんよ。…ここデイファレトの属性魔力は氷。カッチカチに凍らせるなら大得意です。…しかしながら、私には千年のスキルと卓越したセンスと溢れんばかりの膨大な魔力を持っております故、バリアンとフェンネルの異なる魔術を扱うぐらい朝飯前なのです。………万能って、罪ですよねぇ」
「あんた、自分大好きだな」
リストの覚めた視線と台詞さえにも、ノアはニコニコと微笑む。
都合のいい方にしか解釈しない頭の様だ。