ツインの絆
「孝輔、良かったじゃあないか。」
「うん… 」
実は… 孝輔はヘロインの事より広志の事を、
意識が戻って以来ずっと考えていた。
広志は、昨日ずっと自分の事を真剣に考えていてくれた。
自分は広志と一緒にいてとても楽しかった。
あんなに親しく話をしたのは初めての事だが、
いろいろな事を話してくれて、
思っていたとおり優しい人だった。
それなのに、自分は勝手な行動をして迷惑を掛けてしまった。
もう顔も見たく無いと思っているだろう。
かしらの息子だから、父が頼めば一応は動いてくれるだろうが…
心情的には見捨てられてしまったのだろう。
そう思うと情けなくて悲しくなっている孝輔だった。
「僕… 広志さんが一生懸命やってくれたのに、
裏切るような事をしてしまった。」
孝輔はうつむきながら、ぽつんとつぶやくように言った。
「広志は、自分が一緒にいて、
お前をそんな目に遭わせてしまったと言って悔やんでいた。
もっとも今はそんな心は消えている。
とにかく和也たちとの絆だけで生きているようなあいつが、
そんな事を言うのは珍しい。
どうも、お前たちを気に入ったようだ。」
孝太が、孝輔を励ますように広志の様子を話している。
何も気にする事は無い、
広志はお前たちが好きだぞ、と言う事を、自信を持って口にした。
「広志さんが… 」
今度は大輔も声を張り上げて確認の言葉だ。
「ああ、言っていたなあ。あいつは物心着いた時から一人だったから、
精さんの子供となって初めて家族が出来た。
岡崎に来て和也たちと友達になり、
同じように成長して来たが、今は別々。
しかし和也たちとは不思議な絆で繋がっている。
が、お前たちを好きだと言っていた。
あいつがそんな事を口にすることは珍しい。」