ツインの絆
「父さん、俺、将来野崎組で働けるかなあ。」
広志が自分を好いてくれている、と聞いた大輔は
嬉しさのあまり、自分が長い事胸にしまっていた、
いくらかの不安が混じる将来像を口にしていた。
こう言う話は、孝輔がこんな状態の時にするものではないだろうが、
自然体で口から出てしまった。
「お前が… とびをしたいのか。」
孝太は嬉しさを滲ませながら、
しかし何故か躊躇の心を浮かべた。その父の反応で…
やっぱり千草の子供の俺では駄目なのか。
和也に認められていなければ野崎に関われないのか、
と大輔は悟ったような気持ちになった。
黙って聞いていた孝輔も意外だったらしく、
真剣な顔をして父を見た。
「お前がとびをしたいとは思っても見なかった。
俺は、お前たちは大学まで行って,
一応の学業を修めてから社会に出て欲しいと思っていた。
お前は剣道の筋も良いようだ。
大学へ進んで剣道を続けたらどうだ。
確かに野崎組はとび職としては輝いている。
しかし、とびの仕事はきついぞ。
はっきり言えば,誰も好きでとびになったわけではない。
お前のように大学まで行けるものなら行きたい。
しかし家の事情や学力の事情などで諦め、仕方なく、
生きるためにとびになった者がほとんどだ。」
孝太は息子の大輔が、野崎組で働きたい、と言ったことから、
とび職人になりたい、と思ったようだ。
それで、とび、と言うものの実態を話そうとしている。