ツインの絆
「大輔が野崎に興味を持ってくれているとは嬉しいよ。
おじさんは、とびだけが野崎組だと思ってしまうけど… 」



いつの間に来たのかドアのところに広志が立っている。


そして大輔の隣にイスを運び自分も座った。




「確かに今は僕達だけで何とでもなる。

だけど組織にはそれなりの代表がいるものだよ。
おじさんは野崎組を復興した人、
おじさんたちが一生懸命良い仕事をしてくれているから名声も出ている。

だけどその次は、もう一歩前進しなくては。
だから大輔が一級建築士の資格でも持って野崎組にいてくれたら形が良くなる。
盤石なものになる。

あきら兄ちゃんが二級の資格は持っているけど… 
最近は建築分野もいろいろな規制が出来、
そうでなくても災害に遭ってもびくともしないようなモノを手がけなければならない。」



広志も大輔の気持が嬉しいのか、
自分の理想とする野崎組の話をしている。



「最近のうちの仕事は、昔のように、ただ大手から請け負うだけではなく、
野崎を見込んで全面的に任せてくれる仕事もたまだけどある。

ほら、大きいもので言えば数年前から始めて昨年完成した、
本宿の役所が経営している保養施設。
あれなどは大きなゼネコンと呼ばれる会社ではなくて、野崎が全て仕切ってやった。」



そのことは知っている。


完成した時に、大輔は祖母たちに連れて行ってもらい、温泉施設で半日遊んできた。


その後もただ券をもらい、友達と行ってきた。


ただ孝輔は、母と真理子の行動に合わせていたから、
行った事も見たことも無かった。



「あの時はあきら兄ちゃんが大変だった。
だって他の土建屋や工務店の職人達、とびたちの仕事振りの管理だけではなく、
図面そのモノも任された。
だけど二級建築士の資格はあっても、普段はとび職人として働いていたのだから… 
毎晩遅くまで事務所で必死だった。

あの時は和ちゃんが陰で支えた。
東京のおじさんの会社が関連している研究所に依頼して、
あきら兄ちゃんの製図を見てもらい、
不備なところを指摘してもらった。

もちろん、昼間は他の仕事に出ていたあきら兄ちゃんが、
特別タフだからできた事だよ。」

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