ツインの絆

野崎組の事を広志は特別なように話しているが、
所詮とび職、そんな大きな仕事は滅多にあるものではない。


普通は大きな会社から請負で声をかけてもらえば御の字だ。


とび職に一級建築士の居場所など… 


本物のとび職人ならそう思うだろうが、どうもこの広志は、
道子の気持に感化され、野崎組を特別なものと考えている。


そして、その方向へ向って突き進もうとしている。


あきらにしろ、顧問弁護士、コンサルタント、などと名乗っている悟や和也も、
みんな気持は同じようだ。


広志の話を聞いている大輔は、
若者特有の純粋さか、広志の心が良く分かる。


そう言えば正信さんも設計士。


野崎にいてもまともな仕事は無く、
一応は独立しているが、野崎によく顔を出している。


高校生になってから時間があれば事務所をのぞいていた大輔、
少しは様子が分かっていた。


そう、広志は自分が守っていると自負している
野崎組を最高のように思っている。


しかし、今は景気が低迷している時期だ。


建築関係者は、よくニュースで言っているように、
バブルがはじけて仕事も少ないのかも知れない。


やはり野崎に建築士だなんて… 

とび職にそんなものは不要だし、
気にしてくれても給料を払うのだって大変なのかも知れない。


広志の言葉で初めは自分も頑張れる、と思ったものの、
最後には複雑な気持ちになっている大輔だ。
< 157 / 205 >

この作品をシェア

pagetop