ツインの絆
「皆、俺の肩、見てよ。」
夕食時間、ギブスをはずした大輔が、
万遍の笑みを浮かべて戻って来た。
「おう、もうはずれたのか。」
父がいち早く反応して嬉しそうな声をあげた。
「うん、今日、もう一度レントゲンを取ったら、
この程度なら自然治癒するって。
俺って回復力が早いって言われた。
これで日曜日は思い切ってやるぞ。」
と、大輔は日曜日に予定されている高校剣道三河地区大会に向けて、
気迫満々の笑顔を振りまいている。
「大輔、良かったね。試合、僕、見に行ってもいい。」
会場となるのは岡崎市民総合運動公園内にある体育館,
少し距離はあるが、自転車で行けない所ではない。
毎日事務所でブラブラしている孝輔は、
自分の目で大輔の、快復した大輔の闘い振りを見たかった。
「ああ、孝輔なら大歓迎だよ。同じ高校生だし… 」
大輔の気持としては、家族はもっと大きな大会になってから、
しかし、進路を決めかねている孝輔が来るのは歓迎だ。
そう、孝輔はまだ広志に自分の気持ちを伝えていなかったのだ。
このまま中卒で終わってしまうのは不安が大きいが…
今頃になって転入生として通う度胸が未だ備わらなかった。
広志のところにいる時は早く決めなければ、と思うのだが…
一人になると転校先で待ち受けている、
醜聞の恐怖が大きくて決心が付かなかった。
今は退学になった高校生。
辛うじて、退学手続きをしたところだから高校生としての身分は維持されている。
広志は急かす事無く、
孝輔の気持を大切にしてくれているようだが、
広志から様子を聞いた大輔は、孝輔の態度に不満なのだろう。
孝輔は大輔にまぶしいものを感じながら、
自分が落ち込んだ事を意識している。
優柔不断な駄目な奴。
大輔の強気が羨ましい…
忘れていた女々しい孝輔が顔を出している。