ツインの絆

「孝輔、大輔の回復祝いだ、バイオリンを弾いてくれ。」


「なんだねえ、孝太は。
今、私が孝輔に頼もうと思っていたのに。」



父の声が終わるか否や、ゆっくりと箸を置いた祖母の朝子が、
孫の孝太をすねるような眼差しで見つめ、
ひ孫の孝輔を優しい笑顔で見ている。



「なんだ、思いは同じか。」



孝太はそう言って満足そうな笑みを孝輔に送った。 



「またあれ。」



孝輔は言われるままに二階からバイオリンを持って来た。


あれ以来バイオリンに触れていない孝輔だが、
観客はクラシックには無関心の家族。


音だけ出していれば満足してくれるだろう、
と孝輔は安易に考え、
サンサーンスの【聖母の宝石を】を口に出した。


祖母たちは、和也が大好きなその曲を楽しみにしている、
と言う顔をしているが、父は異なる事を口にした。



「いや、俺はもっと元気の出る曲が良いな。
大輔が優勝するように… 
ほら、和也たちの十八番があるだろ。
あいつらが暴れながら歌っているやつだ。あれを弾いてくれ。」




それは少年忍者が活躍するアニメの主題歌、
それを事あるごとに、
成人になっている三人が適当な替え歌まで作って披露している。


正月明けに行った職人の結婚式、
家族のいない職人は、節約もあってか、
時々、野崎の座敷で式を挙げる。


初めから道子の計らいで、
玄関横の座敷は10畳間が2間続きで出来ている。


普段、リビングとして1部屋は使っているが… 


その時も、たまたま戻っていた和也、東京にいた悟を呼び出し、
広志とあきらにもきちんと役を決め、
歌って踊りながら、
窓から飛び出して【見ようによっては】暴れていた。


四歳になるあきらの子供・リックもはしゃいでいた。


決して忘れられない結婚式になった事だろう。
< 176 / 205 >

この作品をシェア

pagetop