ツインの絆
そう思うと、孝輔はアキと同じ空間に居たたまれず、わあっーと叫んで外に飛び出した。
後には、不気味なアキの高笑いが追って来る。
それがいつまでも孝輔の耳を支配し、いくら走っても耳から離れなかった。
孝輔は夕食の支度をしていた則子にも、(ただいま)の声も掛けずに二階の自室へ駆け込んだ。
そして、自分の身に起こっている恐怖から逃れるために、ベッドに潜り込み、頭から布団を被り、声を殺して泣いている。
それが今の孝輔に出来るただ一つの事だった。
あの時… 大輔が、話があると言って来た時、剣道の練習中に大輔の心が一瞬にして空虚なものになった、と心配して来た時、
あの時、僕の体に薬物が入ったのだ。
ただのキャンデーと思い、心配してくれた大輔を遠ざけてしまった… 自業自得だ。
今さら後悔しても遅すぎる。
弱いくせに我を通して、結局は絶望の淵に立たされている。
ああ・・もう駄目だ。
これから自分はどうなるのだろう。
こんな事は誰にも相談出来ない。
母の言い成りになっていた真理子と孝輔は、やはりくだらない人間と言われ嘲られ…
一生懸命生きている、この家の中で厄介者だ。
真理子は妊娠したからそのショックで自殺未遂をしたが…
僕はもっと悪い。
その内にヘロイン中毒患者としてどこかの施設に送られるのだろうか。
家族に恥をかかせたまま…
嫌だ、そんな事は嫌だ。
僕はもっと普通に生きたい。
コンクールに出られなくても、ずっとバイオリンを弾きたい。
ずっとこの家で家族の顔を見ながら生きていきたい。
退学になってもいい。
だけどここにいたい。
警察に捕まって少年院へ行くのは嫌だ。
父さんを悲しませたくはない。
父さんに嫌われたくはない。
大輔、僕はどうしたらよいのだ。大輔…
大輔、大輔、助けて。