ツインの絆
孝輔は襲い来る恐怖から逃れようと、思わず大輔の名前を呼んだ。
昔から自分が災いに襲われた時は、必ず大輔が何とかしてくれた。
双子と言うのに、いつも大輔が自分を守ってくれていた。
恐怖のどん底で頭に浮かぶのは… 最後には大輔の顔だった。
その大輔はいつもより早くに帰宅した。
もう少し道場にいるつもりだったが、いきなり孝輔の声がしたような気持ちになり、落ち着かなくなった。
それで急いで着替えて帰ったのだ。
最近は、あのアキの件以来、話らしい話はしなかったが、
孝輔の事はいつも気になっていた。
声は… 空耳かも知れない、と思いながら玄関前に到着して、
自転車を敷地内に入れようとしていた。
「あの… 」
その時、大輔の後ろで女の声がした。
振り向けば…
見たような、そうでないような水色のジャケットを羽織った若い女が立っていた。
「はい。何か… 」
「あの、私、坂上春香です。」
と名前を名乗っているが、大輔はすぐには思い出せない。
自分たちは双子だから、孝輔と間違えているのかとも思うが、
今の孝輔は、いや、以前でも可能性は薄い。
しかしどこかで…
大輔は必死で考えている。
女性に声を掛けられて、知らない、では情けないような気にもなった。
「私… 数週間ほど前に助けていただいた… 」
思い出した。あの時の女子高生だ。
こんな服だから気がつかなかったが、確か能見に住んでいるとか言っていた。