君に幸せの唄を奏でよう。
「あ、ありがとう」
「これぐらい大丈夫だよ」
滅多に笑わない浩ちゃんが微笑む。その微笑みが嬉しくて、心臓がドキンッと跳ねた。
「相原?どうしたの?」
浩ちゃんが、心配して私の顔を覗き込む。
「へッ!?ううん大丈夫だよ!」
浩ちゃんの顔との距離が近くて、心臓の高鳴りが止まらず顔が熱くなる。きっと、顔が赤くなってるから気づかれないように、下に俯いて作業を続けた。
「よし洗えた。相原、拭くものとってくれる?」
「へッ!?ど、どうぞ!」
さっきの動揺で心が落ち着いてない中、唐突に声をかけられ慌ててタオルを渡す。
「大丈夫?」
挙動不審な行動を取る私を心配して、優しく声をかける。
「だ、大丈夫です!」
顔の火照りが暑くなってきて、首を振るのに精一杯。
「クス。ならいいんだけど」
浩ちゃんは、小さく笑いながらタオルを受け取る。そして、何事も無かったかの様にビーカーを拭き始める。
笑われて恥ずかしい……って考えていたら、ふと視線を感じて振り向く。何故か、浩ちゃんは真剣な瞳で私を見つめていた。そして、静かに口を開く。
「…あのさ相原、ちょっと聞きたい事あるんだけどいいかな?」
普段よりも、静かな口調で話す浩ちゃんの姿を見て、深刻な話なんだと理解する。
「ど、どうしたの?」
「…さっきの話し掘り返すんだけどさ、相原は高橋の髪をどう思う?」
「私は、唄希ちゃんの髪の色、大好きだよ」
私は、思っている事を素直に答える。唄希ちゃんの髪は、色素が薄くて柔らかい栗色。髪が光に反射するたび、キラキラと輝いているから凄く綺麗で好き。
すると、私の言葉を聞いた浩ちゃんは、ほっと安心した表情を浮かべる。
「よかった。僕も高橋の髪は、綺麗で好きだよ」
その言葉を聞いた瞬間、何故か胸にチクっと小さな痛みが走る。
「…綺麗だよね。で、でも、急にどうしたの?」
胸の痛みを誤魔化すよう、浩ちゃんに質問をした。
「ほら、女子って結構女子同士で妬んだりするだろ?他のクラスから、高橋の噂を聞いてさ」
その言葉を聞いて、ドクンと嫌な感じに心臓が早く脈を打つ。
「染めて調子にのっているって「調子なんかのってないよ!」
突然、私が怒りながら言ったせいで、浩ちゃんは驚いた表情をした。感情的に話返した事に、罪悪感を覚える。
「ご、ごめんなさい。私ついカっとなって「よかった」
慌てて謝る最中に、浩ちゃんの口から出た予想外の言葉を聞き驚きを隠せない。
「相原が、ちゃんと高橋を理解しているのが分かってよかった」
「どういうこと?」
話が見えてこないから、不安になって聞く。浩ちゃんは、何処か嬉しそうな表情で話だす。
「中学の時、“あんな事”があったせいで、先輩から髪のことまでもいろいろ言われてただろ?」
「うん。本当にあの出来事は酷かったよね……」
唄希ちゃんは何も悪くないのに、先輩達が一方に責めて嫌がらせをして……。私は、未だに嫌がらせをしてきた先輩達を許せない。
「でも、高橋は負けなかった。逆に先輩達を倒しただろ?」
「あの時の唄希ちゃん格好よかったね」
どれだけ、先輩から嫌がらせを受けても絶対に屈しなかった。いつでも、真っ直ぐな唄希ちゃんで立ち向かっていた。
「そうだね。だから、僕は高橋に聞いたんだ。“何で高橋は、そんなに強いの?”って。そしたら“あたしが強いのは、皆があたしを理解してくれているからよ”って」
浩ちゃんの言葉を聞いて、私の頭の上にはハテナマークがいっぱい浮かぶ。