君に幸せの唄を奏でよう。
「僕も意味が分からなかったから、もう一度聞いてたら、“あたしの事をちゃんと分かっているから、友達でいてくれてるんでしょ?皆が、居てくれるからあたしは強くいられるの”って言ったんだ」
「強いね。唄ちゃんって」
その言葉を聞いて、誇らしく感じて嬉しい。私は、いつも唄希ちゃんの真っ直ぐな言葉に励まされる。だけど浩ちゃんは、私と違って深刻そうな表情で話を続けた。
「……確かに、周りに何を言われても真実を知っている人がいれば、堂々と胸を張れるって言いたいけど、それはちょっと違うんじゃないかなって思って。よく言えば強いけど、悪く言えば抱え込んでるんだよ」
「確かに。唄希ちゃんは、よく“大丈夫”って--!」
浩ちゃんに言われてある事に気づく。
「私、いつも唄希ちゃんが大丈夫って言ってたから安心してた…。私、なんにも分かっていなかった…」
浩ちゃんが言ってくれなかったら、中学みたいに同じ過ちをしてた。また、唄希ちゃんを助けられない所だった。
私は、唄希ちゃんの親友だからという理由で、全てを理解しているつもりだった。
「だからこそ、僕達にしか出来ないことがあるだろ?僕達は、高橋の“理解者”だろ?」
落ち込んでいる私を励ますように、浩ちゃんがふわっと優しく微笑んでくれた。
「うん。私達が唄希ちゃんを支えてあげなくちゃ!」
私にも私にしか出来ないことがあるはず。今度こそ、ちゃんと守ってあげたい。
「そうだね。こっちがしっかりしてないと支えてあげれないからね」
「だって私達は、友達でもあり大切な仲間だもんね」
私がそう言うと、浩ちゃんは安心した笑みを浮かばせる。
「じゃ、これ戻してくるから。相原は机拭いてくれる?」
「分かった。手伝ってくれてありがとう」
「いえいえ。じゃ、行ってくる」
浩ちゃんは、ビーカーとガラス棒を片付けに行った。私は、さっきの事を考えながら机を拭く。
私は、本当に唄希ちゃんの事を何も分かっていなかった。浩ちゃんに言われて、気づいた事に少し悲しく感じる。それともう一つ。気づきたくない想いに気付いてしまった。
浩ちゃんは、唄希ちゃんの事が好き…。本当は応援してあげるべきなのに、素直に応援してあげられない私が邪魔をする。
心に、鋭いナイフを突きつけられたみたいで痛い……。そして、悲しみを含んだドロドロした感情が胸を締め付けた。
「相原、終わった?」
ビーカーを片付けに行ってた、浩ちゃんが戻ってきた。
「う、うん。タオル戻しに行ってくるね」
誤魔化すように笑顔をつくって、その場から逃げるようにタオルを返しに行く。
私は、唄希ちゃんに言えない秘密が出来てしまった。私が、浩ちゃんのことを好きってことを…。
今度は、胸が締め付けられたかのように痛くなった。