君に幸せの唄を奏でよう。



『…悪い。“また今度”話す』


あの時、橘 奏は無意識に言ったのかもしれないけど、その一言がとても嬉しかった。


少しだけ、あたしに心を開いてくれたみたいで。


今日は、ほんの少しだけど、橘 奏の本当の姿が見えてきた。


歌を“愛して”いたこと。音楽をしていたこと。


『だけど、俺は捨てたんだ。“あの日”から』


“あの日”…それがひっかかる。やっぱり橘 奏は、なにかに傷つかれたんだ。


橘 奏にとって、“あの日”は全てを変えてしまった日。


そして、もう二度と戻れない日。


こんな想いをずっと、一人で背負い込んでいたんだ。


どんな気持ちで、あたしに話してくれたんだろ……。


今日、話してくれて嬉しかった半分、やっぱり悲しかった。


『…ああ。憎い』


それを聞いた時、凄く胸が苦しくなった。まだ、聞くなら“大嫌い”の方が良かった。


やっぱり、憎くて仕方ないんだ…。


それでも、あたしは、もっと橘 奏のことを知りたい。


……でも、どうして、あたしはこんな風に想えるのかな?


興味なのかな?それとも、同情?それとも……。


いろいろ考えている内に、あたしは眠りにつてしまった。



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