君に幸せの唄を奏でよう。
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「では、これより曲を決めていきたいと思います!!」
「イェ~イ」
「い、イェ~イ…」
ライヴの打ち合わせをするために、ハンバーガーショップに来た。恒例で、あたしの高いテンションのノリに浩ちゃんがノる。佳奈は、少しだけ恥ずかしそうにしていたけどノってくれた。
「で、何なんだお前ら?」
ただ、亮太だけが肘を机に立て頬を置き、怪訝(けげん)な顔つきをする。
「なにって……今から曲を決めるでしょ?だから、司会やってるのよ」
「だから僕達が、盛り上げてあげないとダメだろ?」
あたしと浩ちゃんの答えに、亮太は不服そうな顔をした。
「いつから、そんな流れになった?」
「「えっ?ノリで」」
あたしと浩ちゃんが答えると、亮太はガクっと肩を落とした。
「聞いた俺が、バカだった……」
「亮太くん……」
亮太の隣に座っている佳奈が、とても心配そうに見つめる。
「佳奈、ほっといて大丈夫よ。亮太が、空気読めば済む話なんだから」
少し亮太に意地悪をしようと思ってビシッと言った。
「空気読まないと」
あたしの後に続き、浩平ちゃんがボソッと呟く。
「うるせーッ!これが俺なんだよ!」
あたしたちの意地悪に、亮太は半泣きをしながら訴えてくる。
「そんなの知ってるわよ」
あたしは、わざと冷たく言った。すると、あたしの一言にショックを受けたみたいで「一体、俺って…」と悲しそうに呟く。
しまった……。ちょっと、やり過ぎた……。
「亮太」
亮太に話かけようとしたら、浩ちゃんが、急に真剣な顔をして亮太を呼ぶ。そして、ニコッと微笑みながら―――。
「ドンマイ」
「慰めるなぁぁぁーーッ!」
浩ちゃんの一言に、激怒する亮太。
あたしも亮太をいじったりするけど、浩ちゃん程ではないと改めて確信した瞬間だった。
「で、曲考えてきた?」
亮太の怒りも収まり、ライブで歌うオリジナル曲を決め始める。
「一応4曲作ってきた」
亮太は、リュックから自分が考えてきた楽譜をテーブルに広げる。亮太の作る曲は、どれも本当によくてメロディーを見ているだけで、歌い出したくて体が疼く。
「どれもいいわね。あたし、亮太の作る曲好きよ」
「~~~お、オゥ」
あたしがそう言うと、何故か亮太は顔を真っ赤にして照れ臭くさそうにする。
「うん。いい曲ばっかりだ」
「亮太くんが、いつも作る曲はいいよね」
佳奈と浩ちゃんに言われ、亮太は嬉しそうに笑っていた。
「相原も作ってきたんだろ?」
亮太に聞かれた佳奈はビクッと反応する。そして、恥ずかしそうにもじもじし始めた。
「一応ね、2曲作ってきたんだけど、亮太くん程では……」
自信が無さそうに、下にうつ向きながら小さな声で話す。
「そんな事ないわよ!佳奈の作る曲全部好きよ」
「僕も相原の曲いつも楽しみにしているし」
あたしと浩ちゃんに言われて佳奈は、りんごのように顔を紅く染める。
「~~2人共、大袈裟に言い過ぎだよ!」
佳奈は、両手をブンブンと振って遠慮をする。
「そんな事ないわよ。ねぇ、亮太?」
「おう。俺も相原の曲好きだから、いつも楽しみにしてるんだぞ」
亮太にそう言われ、佳奈の顔は更に紅くなった。
「~~い、今から出すけど、ダメだったらダメって言ってね!」
佳奈は、そう言いながらあたし達に楽譜を一生懸命見せてくれた。佳奈の行動が可愛くて、思わず3人で顔を見合わせてクスっと小さく笑う。
「……ど、どうかな?」
佳奈は、オドオドしながらあたし達に尋ねる。
「凄くいい曲よ。さすが、佳奈!」
「本当に?今回あんまり自信なくて……」
あたしの言葉を聞いても、少しだけ不安そうにする佳奈。
「大丈夫よ。もっと、自信を持って」
あたしの言葉を聞いて安心したみたいで、佳奈は嬉しそうに微笑む。