君に幸せの唄を奏でよう。
「へぇー。中々いいじゃん」
第一声を出したのは、意外にも亮太だった。
「そうだね。いつものやつと比べたら、最後もしっかりしてるし」
「私、この曲好きだよ」
亮太の後に続き、浩ちゃんも佳奈にも受けたみたいで好評だった。それが嬉しくて、顔が緩んだ。
「で、もう一曲は?」
亮太はあたしに手を差しながら、早く曲を出してくれと期待した顔を向ける。亮太の反応を見て、早く言いたくて身体がうずうずする。
「もう一曲は、一石二鳥の曲よ」
「「「一石二鳥?」」」
みんなは、驚いて顔を見合わせた。みんなの反応が、思っていたよりも良かったから、発表するモチベーションがさらに上がる。
「そう!一つめは、町おこし。二つめは、ギャップよ!」
「ギャップって?」
佳奈が、不思議そうに聞いてきた。
「“新しいあたし達の魅力”を見せるのよ」
あたしの説明に、「なるほど」とみんなが納得してくれた。
「じゃあ、今から見せるから、凄すぎてビックリしないでよ?」
本当に、この曲には自信がある。きっと、みんなも喜んでくれると思って、胸を張ってみんなの前に曲を出した。
[愛される者]
[みんなから愛されているあなた
何年たっても変わらない
近づきたくても近づけない
独り占めはさせてくれない
あなたは、特別扱いをしたりしない
毎日会いたいけど、会えない
あなたのおかげで、笑顔になれる。幸せになれる
あぁ、食べたい花田屋のシュークリーム]
みんなの反応を楽しみに待っていると、先に読み終えた亮太が無言であたしの方に振り向く。ただ、あたしは亮太の反応がさっきよりも違うから、感動のあまりに何も言えないんだと思っていたつかの間――――。
「このバカァァァァァッ!!」
力一杯に、あたしの頭へとチョップをする。あまりの痛さに、しばらく声が出なかった。
「い、痛いじゃないっ!」
あたしは、涙目になりながら亮太に訴える。なんで、こんな事をされたのか不思議で仕方がない。
「なぁーにが、町おこしだッ!どう考えたって、お前が食いたいだけだろがァァァッ!」
亮太は、勢いよく椅子から立ち上がって、全ての怒りをあたしにぶちまける。