君に幸せの唄を奏でよう。
俺が歌を否定して追い詰めても、堂々と胸を張って歌を肯定するあの女が、とても羨ましくて憎かった。
俺は、何がそんなに羨ましかったんだ?あの女が、歌を好きだからか?
辿り着かない答えを、永遠に探し続けている。
「惨めだな……」
自問を繰り返す自分が情けなくて、空っぽになった缶を握り潰した。
「なんか言ったか、奏?」
宮木が、不思議そうな顔をして聞いてきた。
「いや、なにも。早く行かないと講義始まるぞ」
俺は、早歩きで教室に向かった。
「待てよ、奏!」
考えても“あの頃”には、戻れない。戻る勇気もないんだ………。
俺は、早歩きで教室に向かった。
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ムカつく~ッ!!
あたしは、昨日会ったあの男の事を考えていた。
何が不愉快よッ!人を幸せにする魔法をナメるなあぁぁぁッ!!
……て叫びたいけど、今は世界史の授業で言えない。
本当になんなのよッ!歌は批判するわ、あたしをバカにするわで……
言いたい放題にも程があるわよッ!
しかも、お母さんとの思い出の“秘密の場所”が あんな奴に見つかるなんてッ!
今度会ったら、あいつの根性を叩き直してやるッ!あいつ気に入らないッ!
「で、なんで朝からイライラしてるんだ?」
授業も終わって、今は休み時間。
今朝からあたしは、機嫌が悪くてみんなとお弁当の時以外は話をしてなかった。
「……別に。人生、いろいろあるのよ」
あたしは、素っ気なく答える。
「話したくないなら仕方ないけど、そのイライラで周りを巻き込むな」
亮太が、少し怒った表情をした。