CHERRY

私があわあわと焦っていると悪魔の囁きが…

「ゆずー、この後どーしよっか?いっその事ショートヘアにして行くか?あ、それともお風呂に入って髪洗って乾かしてから結いて学校に行くか?あーそーしようか。久し振りだなー、何年振り?一緒にお風呂にはい」

「ゆ、ゆう!!!ストップ、ストップ!!戻って来て!正気になって!!」

「んー?俺はいつでも正気だよ?さぁ、ゆずー?このグシャグシャでボサボサな髪どーしようか?」

由の怖いのはニッコリとした可愛い笑顔で優しい口調で怖い事を言う。

こーなるとまた`アレ'か……

今月またピンチ…

そう思いながらも私は由と向き合う。

「ゆ、ゆう…?」

「ん?なにー?」

由は知っている。

`アレ'を言わないと自分は許さないと。

『この悪魔めー…!!!』

なんて事は勿論目の前の悪魔には言えない…、から心の中で叫ぶ。


私は由に土下座をした。そして――…

「…この前発売したヘアーカタログの『CHERISH』…買ってあげるから…」

「お、まじで?!ありがとうー!!俺さ、今月ピンチで買えないかと諦めてた所なんだよなー」

ニッコリとした可愛い笑顔から一編、無邪気な笑顔になる。

『こんにゃろ~…!!!詐欺だ、詐欺!!なんで髪を乾かさなかっただけで……!!CHERISHって3000円もするんだからね?!?!分かってる?!高1にとって3000円は貴重な財産なんだよ?!?!』

なんてまた目の前にいる悪魔には言えず…、心の中で叫ぶ。


『CHERISH』は年に4回、2月、5月、8月、11月にしか発売されない超人気のヘアーカタログ。
季節に合わせて、今年の流行を先取りされた髪型が載っていて、載っている髪型全てが流行る。
3000円は高いけれど、買う人からするととても安い。なぜなら、カタログに出ているモデルさん達が付けているカチューシャやリボンなどが全て付いてくるから。ブランド品では無いが、約10個のアイテムをいろんな髪型に使い回している。
実際は約5000円近くする物を3000円で売っているんだからとても安い。

「じゃっ、やりますか~♪」

由はそう言うと自分の前髪をゴムで結ぶ。

由が前髪を結ぶっていう事は本気を出すっていう事。


< 4 / 19 >

この作品をシェア

pagetop