傷の行方
次の日仕事がある彼と


一緒にいられる時間は



もう少なくなっていた



彼は「なんでも焦るなよ」と言って



車に戻りながら



「見てる人は見てるんだよ」と言った



私は黙って



泣いて腫れた顔を隠して


助手席に乗り



家まで送ってもらった



懐かしい彼の助手席



もう誰かの助手席でも



来てくれたことに



感謝していた



あんな別れ方をしたのに



そして母親に連絡をしようと




車の中で思っていた



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