傷の行方
夢のまた夢の話だった


中学に入ると


びっくりする光景を目にした


それは入学式の次の日からだった


私の教室は長い廊下の一番奥にあり


そこへ行くまでには


6クラスの教室の横を歩かないとたどり着けない


そこに 男の子達が両端に列を作っている



持っているのは 生徒手帳とカメラだった


1人ずつ話しかけてくる


「写真撮らせてください」



「生徒手帳に名前書いてください」


「握手してください」


「写真ください」


そういう朝が毎日続いた


「男の子に興味ない」


「写真は嫌い」


「なんで名前書くの?」


「写真持ってない」


毎日朝この言葉から始まった


私が一番気にしていたことは


父親の仕事が知られていないか



それだけだった



すでに皆知っていた


だから 女の子達は何も言わなかった
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