傷の行方
私はずっと



都合のいい女でいたから



面倒な女になりたくなかった



別れることは考えていないけど



しばらくは 抱けない



と彼が謝っていた



私もしばらくは



無理だと思っていたから



肉体関係をもたず



彼は私とは別れず



私の病気を受け入れてくれた



そんな彼の優しさに甘えてしまった



時々


「女の子がいるとこで飲んできたら?」と



お金を渡したりした



だんだん これは愛ではなく



情けなのではないかと



思い始めた



彼の優しさは 私を苦しめた



甘えるなんてことを



私は知らないから



どうしたら いいのかわからなくなった



そして ある日



とうとう 別れを覚悟した



彼のため 私のため



私は好きな人ができたと



嘘をついて 別れた



彼がでていった



一緒に暮らしていた家に



私はひとりで住み始めた



悲しかった

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