闇夜の略奪者 The Best BondS-1
「ジスト!」
エナはこともあろうか、高みの見物を決め込んでいたジストの名を呼んだ。
発せられた声には救いを求める色は含まれてはおらず、それ故に真っ直ぐ胸に切り込む。
その瞬間、心は自然と動いていた。
この呼びかけを無視したら、それはもう人間ではない。そう思ってしまうほど躊躇いなく呼んだエナに、ジストは自身が既に巻き込まれていることを知る。
ジストは小さく息を吐いた。
「……報酬はデート一回」
不本意ながら、その報酬で請ける気になってしまった。
ジャケットの裾に隠れていた銃を取り出し、構え様に引き鉄(ガネ)を引く。
清々しい朝の空気を切り裂く音。
銜えていた煙草から灰が落ちる。
こめかみを撃ちぬかれた男は脳味噌の破片を飛び散らせながら地面に倒れこんだ。
痙攣する男に視線を落としていたエナが、こちらを向く。
絡まる視線の中、彼は傲慢とさえ呼べる笑みを湛えた。
黒檀(コクタン)のような深い紅の双眸がその場を圧倒する。
「――この命、賭けてやるよ」
低く甘い声が愉快気に響いた。
エナはこともあろうか、高みの見物を決め込んでいたジストの名を呼んだ。
発せられた声には救いを求める色は含まれてはおらず、それ故に真っ直ぐ胸に切り込む。
その瞬間、心は自然と動いていた。
この呼びかけを無視したら、それはもう人間ではない。そう思ってしまうほど躊躇いなく呼んだエナに、ジストは自身が既に巻き込まれていることを知る。
ジストは小さく息を吐いた。
「……報酬はデート一回」
不本意ながら、その報酬で請ける気になってしまった。
ジャケットの裾に隠れていた銃を取り出し、構え様に引き鉄(ガネ)を引く。
清々しい朝の空気を切り裂く音。
銜えていた煙草から灰が落ちる。
こめかみを撃ちぬかれた男は脳味噌の破片を飛び散らせながら地面に倒れこんだ。
痙攣する男に視線を落としていたエナが、こちらを向く。
絡まる視線の中、彼は傲慢とさえ呼べる笑みを湛えた。
黒檀(コクタン)のような深い紅の双眸がその場を圧倒する。
「――この命、賭けてやるよ」
低く甘い声が愉快気に響いた。