闇夜の略奪者 The Best BondS-1
――憎いさ。
「憎いに決まってンだろ!」
感情が理性を振り切って迸(ホトバシ)る。
同時に脳裏の蒼い光が一際強く破裂した。
眩暈さえ覚える眩さは視界までも遮り、その瞬間――体は縛された。
動かぬだけではない。意思に反して剣の切っ先が動き出す。ゼルのその喉元へと。
全神経を腕に集中させてみるものの、力が入っているかどうかさえ定かではない。
わかることは、それでも確実にエディはゼルの命を狙い動いているということと、意識を逸らしたその瞬間にも命が潰えるということ。抗えない力――止められない。
「ほう……! エディが意志を持つという話は真だったか……!」
感嘆の声。死神が動く気配は無い。
だが例え死神が動かずとも、このままでは死の刃の餌食になるのは誰の目から見ても明らかだった。力が拮抗する中でぶるぶると腕が震え、筋肉が叫びをあげる。喉仏に触れる冷たい剣先の感覚がゼルを追い詰める。
踏みしめた両足が、床を割る。減り込んだ足の皮膚が裂けるが、意識をやる余裕など無い。
――喰われて、たまるか……!!
剣に意志があるなど、そのような荒唐無稽(コウトウムケイ)な話は認めない。剣は使うものであって、使われるものでは決して無い。
だからこそ、剣を振るう人間には正しい心が求められるのだ。
「ええい、言うことを聞きやがれ!!」
怒鳴りつけたとき、蒼い刀身に静かに伸びて来た手にゼルは目を瞠った。
それは小さくて白いエナの両手。
「させ、ない……っ!」
搾り出された少女の声と共に加えられた力で、剣先が微かに傾いだ。
「オ、マエ……?」
身体は大丈夫なのかという懸念と、何をしているんだという困惑から出た声に、肩で息をする少女は真っ直ぐな眼差しをゼルへと向けた。
「何の為に、助けに来たと思ってんの……!」
額に汗を浮かべ、眉を顰めながらも少女は更に腕に力を込める。
「やめ……! 放せ!」
少女の掌に食い込んでいる両刃の剣。少しでも滑ればそれはそのまま少女の手を傷つける。ただでさえ毒で参っている体にこれ以上の負担をかけるわけにはいかない。
「憎いに決まってンだろ!」
感情が理性を振り切って迸(ホトバシ)る。
同時に脳裏の蒼い光が一際強く破裂した。
眩暈さえ覚える眩さは視界までも遮り、その瞬間――体は縛された。
動かぬだけではない。意思に反して剣の切っ先が動き出す。ゼルのその喉元へと。
全神経を腕に集中させてみるものの、力が入っているかどうかさえ定かではない。
わかることは、それでも確実にエディはゼルの命を狙い動いているということと、意識を逸らしたその瞬間にも命が潰えるということ。抗えない力――止められない。
「ほう……! エディが意志を持つという話は真だったか……!」
感嘆の声。死神が動く気配は無い。
だが例え死神が動かずとも、このままでは死の刃の餌食になるのは誰の目から見ても明らかだった。力が拮抗する中でぶるぶると腕が震え、筋肉が叫びをあげる。喉仏に触れる冷たい剣先の感覚がゼルを追い詰める。
踏みしめた両足が、床を割る。減り込んだ足の皮膚が裂けるが、意識をやる余裕など無い。
――喰われて、たまるか……!!
剣に意志があるなど、そのような荒唐無稽(コウトウムケイ)な話は認めない。剣は使うものであって、使われるものでは決して無い。
だからこそ、剣を振るう人間には正しい心が求められるのだ。
「ええい、言うことを聞きやがれ!!」
怒鳴りつけたとき、蒼い刀身に静かに伸びて来た手にゼルは目を瞠った。
それは小さくて白いエナの両手。
「させ、ない……っ!」
搾り出された少女の声と共に加えられた力で、剣先が微かに傾いだ。
「オ、マエ……?」
身体は大丈夫なのかという懸念と、何をしているんだという困惑から出た声に、肩で息をする少女は真っ直ぐな眼差しをゼルへと向けた。
「何の為に、助けに来たと思ってんの……!」
額に汗を浮かべ、眉を顰めながらも少女は更に腕に力を込める。
「やめ……! 放せ!」
少女の掌に食い込んでいる両刃の剣。少しでも滑ればそれはそのまま少女の手を傷つける。ただでさえ毒で参っている体にこれ以上の負担をかけるわけにはいかない。