闇夜の略奪者 The Best BondS-1
 落胆しているのか歓喜しているのか、どうも読み取りづらい声音だったが、ゼルはふとあることに気付いた。
 何故、今の今まで気付けなかったのだろう。
 「アンタ……目的は、一体なんなんだよ?」
 「先刻、言ったであろう?」
 ゼルは首を横に振った。
 「そうじゃねェ。そんなことが聞きたいんじゃねェ」
 片眉を上げた死神に、ゼルは探るように一度喉を上下させた。
 「アンタ、ホントは……」
 その先の言葉にゼルは何故か確信を抱いていた。
 感じたことが真実であることを、彼は心の何処かで知っていたのだ。死神の空虚な望みを。
 そしてゼルが感付いたことに死神も気付いたのだろう。
 「……言うな……!」
 ゼルの言葉を遮り、死神は鎌を振り上げた。
 その行動で自身の考えが図星であることを知る。
 「そっか……」
 怒りも憎しみも通り越した先にあった哀しみ。その中で、ゼルは小さく息を吐いた。
 「終わりにしようぜ、コレでよ」
 ゼルは強く一歩を踏み出した。殺気も闘志も無く、ただひたすらに哀しみだけに身を焦がし。
 この手で、この一撃で引導を。
 負ける気などしなかった。
 事実、勝ちは決まったも同然だった。
 死神の抱える闇に気付いたその時点で、勝利はゼルのものだった。
 蒼い剣が唸りをあげる。
 風を纏い、冷え冷えとした蒼い光は全てを溶かす蒼白い焔へと立ち代わり。
 その一撃は、闇を一瞬にして掻き消した。

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