桜ノ籠 -サクラノカゴ-
「抵抗がありますか?菊の花を選ぶことに」

突然、
店内の奥から知らない男性の声が聞こえ、
ハッとなった。

「え!あ…その…」

なんて答えたらいいのか言葉を考えていると、


「菊の花は〝お供え〟〝弔い〟のイメージが強いかもしれませんが、
そう決ったものではないと、自分では思っています」

黒いエプロンをつけたその店員さんは、
水に浸された小さな白い菊の花を1本手に取り、
優しく微笑む。


「西洋では、死者のための花とされているようですが…。死者の思い出や追憶として」

店員さんの言葉に、
ドクンと、
鼓動が唸る。


思い出、

追憶……


「でも日本では、菊は桜と同じく国花とされてます。花言葉は〝高貴・清浄〟など色々。
…〝破れた恋・真の愛・逆境の中でも元気〟という言葉もあるようですね」


「破れた、恋…」

思わず言葉に出てしまい、

ハッと気付き、
取り消すかのように、口に手をあてた。


青磁先生の方を見る事が出来ない…



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